神奈川県の軽天屋のシゴト徹底解説、技術力は日本一⁉そのワケとは

神奈川県川崎市に本社をおく、内装仕上げ工事会社の小野内装です。

わたしたちは、大規模な商業施設やマンションなどの内装仕上げ工事、外装や内装に使われる金属パネル工事をメイン事業にしています。

今回のテーマは、「軽天屋の徹底解説」です。そう、わたしたちの仕事そのものについてです。

建設現場では普通に飛び交う「軽天」という言葉ですが、詳しく見てみると意外と知らないことも多いのでは?そこで、軽天屋という仕事をもっと知ってもらうために徹底解説をします。

仕事の概要だけでなく、夏や冬などの現場エピソード、怪我のリスクなど、メリットだけでなくデメリットもお伝えします。とくに “ミリの世界”にこだわる、という軽天屋ならでの職人魂は必見!

お話を聞かせてもらったのは、今回も小野社長です!どうか最後までお読みください。

▽動画で見たい方はこちら▽

軽天屋とはどんなシゴト?

インタビュアー
小野社長、そもそも軽天屋の「軽天」って何ですか?
小野
軽天というのは、軽量鉄骨を素材とした天井の骨組みのことだね。略して「軽天」。天井だけでなく壁の骨組みまでを含めると「軽鉄」と言います。

でも実際、そこまでしっかりと区別をして使っている現場の人は少ないよね。意味はほとんど同じ。どちらかと言えば、古くから働いている人は「軽天」という表現を使うことが多いかな。

インタビュアー
軽量鉄骨とはどんな素材なのですか?
小野
素材の名前はライトゲージスチール(ライトゲージスタッドという場合も)。現場では略してLGSって呼んでいます。

鉄板の厚みは0.5mmと薄く、軽いので扱いやすい。基本の長さは4mですが、3mや5mもあります。5m以上の長さが必要な場合は、それらを繋げて伸ばして組んでいきます。

軽量というだけあって、重さは1mで大体1kgくらいかな。4mのLGSなら約4kg。長いのでかさばるけど、片手でも扱える軽さだね。現場には素材のLGSが10束や20束にまとまって搬入されていますよ。

インタビュアー
仕事の流れはどうなるのですか?
小野
軽天の作業では、まずは軽量鉄骨を組んで柱を立て、骨組みを作っていきます。その後はボードを立てて、配線処理を行い……と、工事の基盤を作る大事な作業ですね。

軽天工事というと、正確にはLGSの組み立てのことですが、そこで終わりの場合は少ない。とくにウチの場合は何でもやるので、ボード張りやクロスも全部引き受ける。仕事はすべてが繋がっているので、全部を知っていないと的確な対応ができないんですよ。

スカイツリーや銀座・歌舞伎座など大規模新築案件

インタビュアー
どんな建物を手掛けているのですか?
小野
多いのは大規模な新築案件だね。ウチが携わったもので言えば、銀座・歌舞伎、ららぽーと、麻布台ヒルズなど。

大規模工事の場合は、内装業者が10社や20社も入っているので、分担作業になります。各社で割り振りが決まっていて、自分たちの担当場所の作業をしていき、境目を上手につなげていくという感じかな。

インタビュアー
改修工事も対応していますか?
小野
もちろん。大規模な改修工事の例は駅だね。

駅の天井には配線がびっしりと通っているのですが、その配線を入れ替えるために天井を一度ばらして、もう一度天井を作り直すとかですね。他にも、大きなものを搬入したいけど戸口が小さ過ぎて入れない場合は、壁を一度壊して物を入れてからもう一度壁を作る場合もありますね。

内装屋(軽天屋)の給料の相場は年収約440万円

インタビュアー
求人ボックスが2023年12月に更新した内装屋(軽天屋)の給料を見ると、正社員の平均給与は約440万円。月収換算だと約37万円とされています。ただ、これも求められるスキルや経験、勤務先によって変わってきます。

内装業を始めるにあたって資格は必要がないため、未経験でも始めやすいのが特徴です。未経験者は月収20万円前後からのスタートの場合が多いのですが、職歴や資格取得などによって給与を上昇させていくことはできます。

夏場の熱中症対策と冬場の防寒対策

インタビュアー
暑い夏や寒い冬は影響を受けたりはしますか?
小野
夏の場合、高層ビルの工事はそれなりにしんどいよね。

オフィスビルというのは窓の開閉ができないことが多いので、建物内にはどうしても熱がこもる。いくら扇風機や送風機をまわして風を起こしたとしても、熱がビルの外に逃げないので暑さは変わりません。

インタビュアー
熱いと熱中症の危険はありますか?
小野
ありますね。ただ、熱中症のリスクは昔ほどではないんだよ。

今は服に空調ファンがついたものが販売されているので、作業員が熱中症になるリスクは格段に減ったね。

空調ファンも最新になるほど高性能になっていくので、本人が自分にあったものを持ち込むことが多い。

もちろん、初めて現場に入るなどで用意をしていない場合はウチは支給をしていますね。

インタビュアー
冬の場合はどうなんですか?
小野
冬の場合だと、やっぱり寒さとの戦いかな。とくに内装屋というのは、エレベーターのシャフトの施工など、外壁が付く前の鉄骨がむき出しの状態でも作業をしないといけないことがあります。壁がないと風はさえぎれないので、当然、冬は寒いよね。

以前、麻布台ヒルズの50階の工事をした時は、部屋の中には雲がかかったかのようにそこら中に霧が出ていましたね。そういえば、東京スカイツリーの工事の時もそうだったかな。

インタビュアー
寒さ対策はどうするんですか?
小野
詰所とかには暖房器具があるけど、作業をする現場にはないね。

なので、基本は服を着込むこと。それに、動いていると身体が暖かくなってくるので、寒さを忘れるくらい仕事に集中するというケースが多いね。

軽天屋が身に着けるべき道具&工具

インタビュアー
軽天屋が実際に使っている道具は以下となります。人によって持ち歩く道具は変わりますが、なんと20㎏になることもあります。道具の一部がこちら!

・安全帯(身を守る道具)
・インパクト(電動ドライバー)
・アタッチメント(インパクトにつけて使用)
・スケール(長さを図るものさし)
・バイスプライヤー(材料を国定する道具)
・ハサミ(鉄を切るため)
・プライヤー(ビスを抜くため)
・さしがね(直角もはかれるものさし)
・スパナー(ナットを止める道具)
・腰袋(工具やビスを入れておく作業袋)

インタビュアー
いろんな工具がある中で、現場でよく使うものはなんですか?
小野
ウチで一番重宝されている工具と言えば……丸ノコ(円盤状の刃を回転させて素材を切る電動ノコギリ)だね。

例えば、素材を切って長さを調整したい時、寸法を測って高速カッターで素材をカットしてから現場にまで運ぶとなると時間がかかってしまいます。大量にカットする必要があれば高速カッターも有効ですが、一本だけその場で処理をしたいのなら、丸ノコに勝る工具は見当たりません。とにかく早いんですよ!

インタビュアー
小野社長がイチオシする工具ということですね。
小野
丸ノコを使用するときに注意すべきは、刃の回転を遅くすること。

例えば、木材をカットする場合は高速で回転する丸ノコを使うんです。木材は鉄と違って切る時に跳ねないのでそれでもいい。ただし、鉄などの金属を切る場合は跳ねたら怪我の恐れもある。なので、回転数を落として低速にして、安全に対応するんです。現場は何よりも安全第一なので!

インタビュアー
小野内装以外の現場でも、丸ノコは使われていますか?
小野
よその現場ではあまり使われないことが多いですね。早くて便利なのに使わない。なぜ普及していないかというと……工具自体が高額だから。

ウチの場合は一人一人に丸ノコを支給しています。道具をケチると仕事が遅くなるんですよ。仕事が早い会社というのは、工具の種類が豊富な会社。それが分かっているので、うちでは工具を充実させています。

インタビュアー
軽天屋の仕事は溶接機が必須な印象がありますが?
小野
確かに、溶接機は昔は欠かせない工具でした。でも最近は、溶接機の出番は一気に減っているんだよ。
インタビュアー
それはなぜですか?
小野
理由は、強度計算の問題。溶接をすると強度計算ができないんですよ。

溶接の代わりに、今はビスを使います。ビスを1本使えば何キロまで耐えられるという計算ができるので、強度計算の数字もしっかりと出る。もちろん、溶接機をまったく使わないということではないんですが、時代とともに求められるものが変わるんですよ。

インタビュアー
工具には様々なメーカーがありますが、小野内装では工具メーカーをmakitaで統一していますよね。なぜですか?
小野
makitaは道具の種類が豊富で適したものを選べるのもありますが、一番は受電バッテリーが共通というところだね。昔はコンセントに差して使用する電動工具が主流でしたが、今の主流はバッテリー式。

なので、充電をする工程が発生するんですが、makitaの場合は充電バッテリーが同じ形で共通なので、他の電動工具のバッテリーを貸し借りできるんだよ。そういう理由で、他の会社も含めて現場ではmakita製が愛用されているんです!

怪我のきっかけは気の緩みがほとんど

インタビュアー
小野社長は安全管理に関してスタッフに何度も注意をしていると思いますが、ベテランスタッフばかりなのに、なぜそこまで言うのですか?
小野
じゃあ、ここで質問。怪我をしやすい状況とは、どんな時だと思う?

高所での作業時?
足場が悪い現場?
作業場が狭い?

一般的には危険な現場だと怪我がしやすいと思われていますが、実際は違います。一番はやはり、作業員の気が緩んだ時に怪我が発生します。

インタビュアー
つまり、意識の問題ということですか?
小野
そうです。これは実際にあったベテラン作業員の話です。その人は60㎝の脚立に乗って作業をしていたのですが、60㎝と言えば、腰よりも低い程度の高さ。

でも、その作業員は脚立から落ちてしまい、とっさに両手を出したのですが出し方が悪かったので、そのまま両手を骨折。半年くらいは入院することになりました。

ベテランだからといっても、気を抜いたら怪我のリスクは身近にある。逆に言えば、気を抜かなければどんなに高い作業場所だったとしても、落ちないんですよ。

怪我をしやすいのは、「足場がきっとあるだろう!」と実際に足元を確認せずに勝手な推測で一歩を踏み出したり、「ちょっとくらいの作業なら大丈夫だろう」と手袋なしの作業をしたり、そういう気のゆるみ、油断から怪我が起こります。だから、何度も注意をして、その気持ちを忘れないようにしてもらっています。

上手な軽天屋と下手な軽天屋は何が違う?

インタビュアー
世間にはいろんな軽天屋がありますが、良い軽天屋と悪い軽天屋の見分け方はありますか?
小野
ありますよ。まず、仕事の服装を見たら大体は分かりますね。

作業着がだらしない、腰袋がボロボロ、そういう人は共通して仕事の進みが遅い傾向にある。もちろん、外見だけで判断はできない部分はありますが、仕事に対する姿勢というのは、やっぱり服装にも出るんですよ。

インタビュアー
そういえば、小野内装の作業員さんは、身だしなみがしっかりしていますよね。
小野
そこは徹底して伝えていますからね。服装以外で言えば、実際に仕事の跡を見たら一目瞭然だね。例えば、大型施設の場合は100mの直線を作ることもありますが、上手な軽天屋の場合は、まるで定規を当てたかのようにまっすぐに作ります。

逆に下手な軽天屋が同じものを作ったら、ところどころ曲がっています。

他に、天井にも技術の差が出ます。天井を下から見上げると違いは分からないんですが、天井の高さに目線を合わせてみると、凸凹していたり、波打っていたりするのが分かります。そういう凸凹した天井は、光を当てると変なところに影ができたりします。

そうならないように、ボードを敷くときに微調整したり、場合によってはやり直したりするので、工事の進行が遅くなるんです。

小野内装の技術力が全国トップクラスの理由は?

小野
ウチの魅力は何といっても、最先端の工法を学んでいて、実際に施工できる点ですね。

例えば、天井の工事と言っても、耐震天井の工法、大規模天井の工法、特定天井の工法と、それぞれやり方が違ってくる。新しい工法を学ぶことは時間と労力がかかることだけど、それを惜しまないようにしているんだよね。

インタビュアー
なぜ、いろんな工法があるんですか?
小野
:建築基準法というのは毎年、大なり小なり改正をされていて、最先端の施工技術を使用しないと、求められている建築基準法、とくに耐震強度が守れないからだね。

関東の有名な建物の建築には、最新の工法が採用されることが多いので、それが対応できないと仕事相手の選択肢にすら入れてもらえないことがあるんだよ。

そういうクライアントの要求にも応えるために、ウチはメーカーに来てもらって説明を聞いたり、講習を受けたりして、常に最新の工法を勉強するようにしています。

インタビュアー
常に進化し続けているので、技術力が全国でもトップクラスということですね。
小野
そうだね。技術もそうだけど、そこに職人としてもこだわりもあるよ。ウチらはプロとして仕事にこだわりをもっていて、丁寧に仕上げているからでしょうね。

クライアントというのはちゃんと見ていて、しっかりと仕事をすれば信頼を勝ち取れます。すると別の現場や、数年後に改修工事が発生したと時にまた声をかけてもらえる。ウチはリピート率が高いので、信頼を裏切らないためにも半端な仕事はできないんですよ!

軽天屋に向いている人、向いていない人

インタビュアー
最後に、これを見た人が軽天屋に興味をもって働きたいと思う人がいると思います。どういう人が軽天屋に向いているのでしょうか?
小野
やっぱり、几帳面な人はこの仕事に向いていますね。つまりは「まあ……いっか!」がない人。

ウチはそういう人を採用していますし、そういう人になるようにスタッフを育てています。逆に向いていない人は、こだわらない人ですね。そもそも、モノづくりというのは、几帳面な人が多いんですよ。作るのは当然として、どれだけ綺麗に作れるか。そういうところにプライドを持つんです。

インタビュアー
小野社長が考える、軽天屋として成功しそうな人は?
小野
軽天屋の仕事というのは、1ミリや2ミリの違いで勝負をする“ミリの世界”なんです。上級者になるほど0.5mmの違い、つまりは“コンマの世界”で仕事をしています。

「1cmや2cmぐらいズレても大丈夫だろう」という“センチの世界”では戦ってはいないんです。 “ミリの世界”にプライドを持っていける人は、軽天屋としても成功すると思いますね。

インタビュアー
小野社長、ありがとうございました。軽天屋の知られざる仕事やこだわりを知ってもらえたでしょうか。これを読んで少しでも興味を持ったら、一緒に働きましょう!

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